日々さまざまな法改正が行われておりますが、今回は令和8年(2026年)度から新たにスタートする「子ども・子育て支援金制度」についてご案内いたします。
いよいよ来月からのスタートとなり、給与計算システムの改修や従業員への事前の説明など、直ちに実務面での対応が求められる重要な変更です。本記事では、制度の概要と実務上気を付けていただきたいポイントを解説いたします。
1. 新制度「子ども・子育て支援金」とは?
近年加速する少子化対策の財源として、新たに創設される制度です。集められた支援金は、児童手当の拡充や、新しい育休給付(出生後休業支援給付など)、育児時短就業給付といった子育て施策に充てられます。
事業主におかれましては、「なぜこどもがいない従業員や、企業も負担しなければならないのか?」という疑問を持たれるかもしれません。
これについて国は、「こどもたちは将来の社会保障制度の担い手となるため、社会全体(全世代・全企業)で支え合う仕組みである」と説明しています。また企業に対しては、将来の労働力確保の観点から、従来よりご負担いただいている児童手当拠出金の延長線上にある追加負担、という位置づけとされています。
従業員への説明の際にも、この「社会全体で支え合う」という趣旨を丁寧にお伝えいただくことが、スムーズな制度導入の鍵となります。
2. 実務において「具体的に必要になる取り組み」
事業主が最も気になるのは、「いつから、何をしなければならないのか」という実務への影響かと思います。以下の変更点について、給与計算ソフトの対応準備を進めていただく必要があります。
① いつから徴収が始まるのか?
令和8年(2026年)4月分の保険料から拠出が始まります。
社会保険料は「翌月徴収」が原則ですので、実務上は「令和8年5月に支払う給与」からの天引きスタートとなる企業が多い点にご注意ください。
② どのように徴収するのか?
支援金は単独で集めるのではなく、健康保険料とあわせて徴収されます。
③ 負担額の計算方法は?(労使折半)
令和8年度の支援金率(保険料率)は、国が一律で「0.23%」と定めています。
給与・賞与それぞれの計算は以下のようになります。
- 給与:標準報酬月額 × 0.23%
- 賞与:標準賞与額 × 0.23%
基本的に、算出した支援金額の半分(1/2)を企業が負担し、残り半分を従業員が負担(給与天引き)する「労使折半」となります。
④ 給与明細書への記載について
法律上、給与明細に「支援金〇〇円」と内訳を記載する義務はありません。しかし、制度の趣旨を踏まえ、従業員がご自身の負担額を把握できるよう、可能な限り内訳を明記する対応が推奨されています。給与計算システムのフォーマット変更が可能か、お早めにご確認ください。
3. 実務担当者が「気を付けなければならない」落とし穴
給与計算においては、イレギュラーなケースの処理でミスが発生しやすくなります。以下の点には特にご注意ください。
- 端数処理のルールにご注意を
従業員負担分を給与から控除する際の端数処理は、健康保険料等の原則と同様です。50銭以下の場合は「切り捨て」、50銭を超える場合は「切り上げて1円」として処理してください。システムが正しく設定されているかの確認が必要です。 - 産休・育休中の免除規定
現行の社会保険料と同様に、従業員が産前産後休業および育児休業を取得している期間中は、支援金の拠出も免除されます。手続きの漏れがないようご注意ください。 - 二以上勤務者の計算
複数の事業所で勤務されている従業員(二以上勤務被保険者)については、健康保険料の算出方法と同様に、合算した標準報酬月額等に支援金率を掛けた上で、按分率を用いて算出する複雑な処理が必要になります。
4. 【要注意】「子ども・子育て拠出金」との混同リスク
現在、事業主は全額事業主負担として「子ども・子育て拠出金」を納付されていますが、今回新設される「子ども・子育て支援金」はこれとは全く別物です。
新設される支援金は「労使折半」となります。経理処理や従業員への案内において、名称が似ているため混同しないよう十分にご注意ください。
最後に:早めの情報収集とご準備を
「子ども・子育て支援金制度」の導入により、給与計算の実務負担は一時的に増加することが予想されます。また、従業員から「給与から引かれているこのお金は何?」といったお問い合わせが寄せられる可能性もあります。
スムーズな移行のためには、対応する給与計算ソフトへのアップデートや、社内向けの事前案内の準備を計画的に進めておくことが大切です。今後の動向にご留意いただき、適切なご対応をお願いいたします。